静かなハング

2019年5月14日

山梨県甲府市の渓谷、2年程前、散々探して見つからなかった岩が、クラックエリアと言うクライマーが時々訪れる岩から、僅か3分の場所に存在していた。今年もイタリアに登りに行くうえで、トレーニングに使えるオーバーハングしたクラックを求めていた。

その岩は残念ながら規模は小さかった、迫力も少し欠ける、しかし見るからに厳しそうだった。新緑にはまだ早い4月中旬が最初の試みだった。花崗岩の表面は少々風化している、誰も登っていないのは明らかだった。数日後に54歳を迎える体には、ハードな身体張力を必要とする動きが連続した。数日の挑戦で、すっかりそのルートに魅了された。また周りの森の雰囲気も良かった。世の中がゴールデンウィークで騒がしくなり始めても、ここだけは誰も来る事はなく、微風の中のんびりと格闘出来た。森の中での岩を登る場合、どうしてもクラックに詰まった草木が邪魔になることが多いが、今回は草木を抜いてまで岩を綺麗に?掃除?してまで上は目指さないことを、この岩を見たときから決めていた。

そして先日ついに登りきった。ルートの名前は「静かなハング」とした。はたして誰かが登りに来る事はあるのだろうか。クライミング手帳に「5月11日「静かなハング」成功」とだけ一行書いた。

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