中国は四川省から帰ってきました

2004年9月10日

8月31日、中国は四川省から帰ってきました。結局目標のビックウォールは登れませんでした。可能性は薄いとは感じていたものの心のどこかで完登できるのではとも思っていましたが。

まず天候が悪かった(25日間中20日は雨が降る)のは自然の事だから仕方ありませんが、あの寒い北壁に対応できる身体に仕上がっていなかったし、弱点である手足の保温のためもっと装備を検討するべきだったかもしれません。しかし疲れ果てるまで登れたので多少ですが満足しているし何より久々にビックウォールを触れたので嬉しい気持ちもあります。またこれほど巨大な壁がわずかなアプローチで挑戦できることに感謝しなければならないとも思ってます。

3700メートルに設置したベースキャンプの環境は今までの数多い海外クライミングの経験からしても素晴らしいほうでした。女性チームが挑戦(残念ながらもう少しのところで敗退)した牛心山(4900m)の取り付きまでわずか1時間、また僕が挑戦したポタラ(5400m)北壁まで4時間弱で行け、ベースキャンプの近くには、川が流れ生活するのには便利でした。そして沢山の美しい高山植物、またヤクやヤギなどの動物達が歩きまわり我々を楽しませてくれる場所でした。

さてポタラ北壁はツルツルの壁で弱点はほとんど無く可能性のあるラインは、今にも落ちそうな怪しげな岩がいくつも引っかかり、もしも誤って墜落したら岩ごと落ちロープを切断する事も考えられるルートでした。また1時間たりとも日が当たらないので寒く、さらにこのルートはコーナーを形成しているためひとたび雨が降ればとたんに流水溝に変化し僕の体はびしょびしょになり手足の感覚はすぐに失うほどでした。

僕は今回はたしてどのくらい登ったのだろうか。900メートルはあると思われる北壁のうち3分の1も登っていない。多分250メートルぐらいでしょう。それが精神的にも肉体的にも限界でした。クライミングの後はあまりの疲労のため食事もうけつけない日もあり毎回エルキャピタンで行われるような厳しいエイドクライミングまたは登山靴での難しいフリークライミングは現在僕が持っているわずかなテクニックはすべて使ったと思います。

さてこれからどうするか。来年再挑戦しようと思っています。すでに中国は成都の旅行会社の事務所に沢山のクライミングギアを残してきています。少し登攀時期を考え、そして全身の持久力などを高めもう一度挑もうと思っています。ここで諦めると僕の肉体も精神もストップしてしまうし、あのポタラ北壁は登るべき壁だと思います。本当はのんびりと乾いた岩でも登りたいのですがすぐに海外に出る予定もあります。9月中旬からネパールに行き少し仕事をしてから、そのまま国境を越えチベットに入り2002年秋にギャチュンカン氷河に残してきた我々のゴミ(登攀具など)を回収する旅に出発する予定です。

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